(花粉と法改正のない)春よ来い
法律はwindowsのアップグレードよりも、こまめに変わっていきます。相続法は昨年に改正がありましたが、私はまだ理解できていません。それなのに、ああ、それなのに債権法改正が4月1日に迫ってきました。
とりあえず、改正法の新旧対象条文をダウンロードしてみました。おいおい解説書などを読みながらやっていくとして、最初にひっかかったのは改正民法第3条の2と95条の条文でした。
第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
民法総則 第二章 人 第一節 権利能力
第二節 行為能力
と並んでいたのが、今回の法改正で、
民法総則 第二章 人 第一節 権利能力
第二節 意思能力
第三節 行為能力
という並びになっています。
「意思能力のない者の法律行為は無効である」と教科書には当然のこととして書いてありました。でも、考えたら、権利能力(第3条)・行為能力(第4~21条)は根拠条文があるのに、意思能力についてはありませんでした。
意思能力がなければ、行為能力もないから、と当たり前くらいな感じで教科書にかいてあって、私もそんな感じで受け止めていたものです。当たり前を明文化したのです。
第95条錯誤無効⇒錯誤取消
従前の民法第95条は「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは無効とする」とありました。あっさりした条文なので、たくさんの判例で補強していました。
改正後は、①意思表示に対応する意思を欠く錯誤
②表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤で、表示されていたとき
で、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができる、となりました。ああ、ややこしい。
①は意思の欠缺で、②は動機の錯誤が表示された場合を明文化したということでしょうか。
重過失の表意者による錯誤の主張は、これまでの判例にそって制限されています(例外として、①相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかった、②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは主張可)。
まとめると、こういうことです。
〇 第3条の2 意思無能力者による法律行為はそもそも無効
〇 無効となる法律行為
・第93条1項但書 表意者が真意でないことを相手方が知っている心裡留保
・第94条 通謀虚偽表示(双方グルで虚偽の意思表示)
⇩
善意の第三者には対抗できない(無過失は要件とされていない)
〇 取消できる瑕疵ある法律行為
・第95条 錯誤(上述の要件を満たす限り)
・第96条 相手方が第三者による詐欺だと知っている又は知ることができたとき
・第96条1項 強迫(相手がどうあれ)
⇩
ただし、善意でかつ過失のない第三者に対抗することができない
- 意思無能力者による法律行為は無効の条文追加(第3条の2)
- 錯誤による意思表示は取消ができると変更(第95条)
- 無効な法律行為は善意の第三者、取消できる法律行為は善意無過失な第三者に対抗できないの条文追加(第93、95、96条)
これらの条文の追加・改正で、総則の意思の欠缺や瑕疵ある意思表示の条文が判決にそってわかりやすくなった…かなあ。
勉強をすすめつつ、今日も書面をつくりましょうか。花粉のせいで肩こりがひどいけど。