お奉行様と官僚 霞が関のゲニウス・ロキ

 東京都内を歩いていると、ときどき歴史を感じるものを見つけます。ここ神田もぶらぶら歩いていると、『佐竹藩江戸屋敷跡』なんて石碑に出くわしたりします。

 東京法務局のある九段下は大隈重信の屋敷跡だし、芝公園の中には都内最大の前方後円墳『丸山古墳』があったりと、バリエーションが豊富です。

 そもそも、日本を動かす霞が関や丸の内のすぐそばに、江戸城跡(土台だけですが)がまんま残っています。東京はすごいです。

大岡越前の屋敷跡!
 今日も地下鉄で霞が関の検察庁に謄写記録を取りに行きました。ついでに裁判所に寄って地下の食堂でお昼ごはんを食べようと思いました。弁護士会館の前を通り過ぎ、右に曲がった植え込みの中に赤い石碑があるのに気づきました。

 『大岡越前守忠相 屋敷跡』とあります。弁護士会館はあの大岡越前の屋敷の跡に建てられていたのです。大岡越前といえば加藤剛、じゃなくて「大岡裁き」です。町奉行といえば現代でいう裁判官じゃないですか。

 弁護士は裁く側ではないけれど、裁判にかかわる専門家です。なんたる偶然でしょうか。

霞が関のゲニウス・ロキ?
 土地には、その土地特有の特性というものがあるという考えがあり、それを「ゲニウス・ロキ」と呼びます。なぜか同じような職業の人から人へ転々と移転する土地とか、似たようなことが起こったり、というような、その土地の歴史に物語を読み取りたくなるような土地のことです(興味のある方は『東京の地霊』『日本の地霊』鈴木博之著をおすすめします)。

 現在、弁護士会館のある場所は皇居のすぐそばですから、大岡越前守の江戸屋敷があるのは不思議ではありません。
 しかし、歴史にすぐれた町奉行と名をのこす大岡忠相の屋敷があった場所のあたりが、裁判所や弁護士会館、検察庁が林立している一角だということに、私はゲニウス・ロキを感じて、にんまりしてしまいました。

 また、大岡忠相は町奉行だけではなく、寺社奉行や普請奉行も歴任しています。官僚としては出世した人でもあるのです。
 弁護士会館から道をはさんだ南側には厚生労働省、環境省、農林水産省などの国を動かす官公庁の庁舎がひしめいています。霞が関は古くから国を動かす官吏が住まうゲニウス・ロキを持った土地なのでしょうか。

 願わくば、納税者としては、大岡裁きとはいかないまでも、官僚に皆さんには公正公平なお仕事をしていただきたいものです。
 官僚のみなさーん、大岡越前がみていますよー。

 さて、裁判所でサービスランチを食べて、事務所に帰りましょうか。