事務屋、万年筆という沼にはまる
最近の言葉で、一つの分野でマニア化することを「沼にハマる」と言いますね。私は万年筆という沼にはまりこんでしまいました。
ペンとパソコンは事務屋の商売道具です。道具に凝るというほどではありませんが、書き味の心地よい万年筆を好むようになり、少し奮発して買った万年筆を愛用するようになりました。
池波正太郎は『男の作法』という本の中で、万年筆は高級なものを持ったほうがいい、男の武器で刀のようなもの、と言っています。私は男ではありませんが、言わんとしていることはわかります。
はじまりはkakunoのM(中字)
私は元々筆圧が低く、ボールペンで字を書くとかすれることがよくあります。宅急便の伝票などは、きちんと文字うつるようにかなり力を込めて書かなければなりません。そのため、かすれないように力を込めてペンを握る癖がついてしまっていました。いつも、手が疲れていたのです。
ふと文房具屋さんで見つけたパイロットの子供用万年筆kakunoのM(中字)を買って試したところ、これがとてもいいのです。力を入れるずとも滑らかにペンが走るので無理がなく、書き味がとてもよく、とめ・はねもつけやすかったのです。1000円でこの品質は買いです。
自分に合った品物を見つけた喜びを弁護士に話したところ、パイロットレガンスという万年筆を、ポンと私にくれました。14金のペン先がなんとも気持ちいい書き味の万年筆で、書いていると、とても優雅な気持ちになります。新しい贅沢を知ってしまいました。ステンレスのペン先とレガンスの14金のペン先とでは、明らかに書き味が違うのです。
このとき、私は弁護士が微笑みながら目の奥がきらりと光るのを見落としてしまったのです。彼は弁護士ドットコムのプロフィールの趣味欄の筆頭に「万年筆」をあげている万年筆の沼にドップリはまった人間で、私も沼にひきずりこむ意図があったのでした。
まんまと沼にはまりこんでしまった私は、勢いがついてドイツの有名ブランドペリカンに手を出しました。いちばん安い(でも1万円越え!)ものでしたが、買っちゃいました。
仕事で愛用しているのは、国産のプラチナのものです。国産のものなら14金のペン先の万年筆でも、舶来物よりは手が出やすいお値段です。#3776センチュリーは14金のペン先と、ほどほどの持ち重りが大変良い万年筆です。また、プラチナのインクは乾きが早いので、擦っちゃう事故が起こらないのも実用的で気に入っています。
いいものを知ってしまったら、もう帰れないのです。思えば遠くへ来たものです。
三島由紀夫のモンブラン、向田邦子のウォーターマン、パーカーにうっとりし、ファンとして同じものが欲しいなあと夢想しますが、なかなか手は出ません。モンブランの万年筆は私が住んでるアパートの家賃の2か月分のお値段です。
でも、できればペリカンのスーベレーンM400(32,000円也)が欲しいのです。ペリカンだとF(細字)でもkakunoのM(中字)くらいの太さで使いやすいはず…。
野望果て無し、沼は底なしです。