相続人のいない相続人関係図

「相続人の特定」とは、戸籍を集めて、被相続人の親族を確認し、誰が法定相続人となるのかを特定する作業です。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍をつなげて収集して、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹がいるかを確認します。

法定相続人は第一順位から第三順位まであり、第一順位が配偶者と子ども、子どもがいない場合は第二順位の父母(父母死亡で祖父母健在のときは祖父母)が相続人となり、子ども、父母がいないときには兄弟姉妹が第三順位の相続人です。兄弟姉妹が相続人なのに、被相続人より先に死亡していた場合は、兄弟姉妹の子(甥・姪)が第三順位の代襲相続人となります。

では、レアなケースとして、親も、兄弟姉妹も、配偶者も、子どももいない方の相続人の特定作業はどうなるでしょうか。つまり、法定相続人が1人もいないことを確認する作業になります。

この場合、まずは出生から死亡までの戸籍を収集すれば、一度も結婚していないこと、子どももいないこと、父と母がすでに死亡していること、兄弟姉妹がいないことが確認できます。
これで、第一順位の配偶者・子、第二順位の父母、第三順位の兄弟姉妹、すべてがいないことが戸籍の記載からはっきりしたので、作業終了かと思いますが、さにあらず。
さらに、父と母の出生から結婚までの戸籍と、祖父母の死亡の記載のある戸籍まで収集しなくてはなりません。

というのは、父と母が結婚するまでの間に、他にも兄弟姉妹をもうけている可能性があるのです。別の人と結婚して、または未婚のままで子どもを持っていることもありえます。

また、第二順位の相続人は、詳しく言うと、いちばん近い直系尊属です。
直系尊属とは、自分と直接血がつながった上の人です。逆に、子ども・孫などの自分と直接血のつながった下の人は「直系卑属」といいます。

いちばん近い直系尊属は父と母ですが、もし、父と母が死亡しており祖父母が健在ならば、祖父母がいちばん近い直系尊属ということになります。
ですから、祖父母の死亡の記載のある戸籍をとって、死亡を確認しないと、第二順位の相続人がまったく存在しないことの証明にはなりえません。

ちなみに、現在、我が国の最高齢の方は明治33年生まれなので、それ以前にお生まれになった方なら戸籍で死亡の記載を確認しなくとも、大丈夫です。

ということで、公的書類である戸籍で、被相続人も相続人も全員が死亡していることを確認し、相続人のいない相続人関係図をつくります。

私は20年以上、この仕事をしていますが、1人も相続人が存在しない相続はほとんどみたことがありません。
大抵は、誰か1人くらいは相続人にあたる人がいるものです。
私にしても、配偶者も子どももおりませんが、父と兄がおりますし。

少子化がすすんでいくと、こういったケースが増えてくるのでしょう。