債務不存在は反訴で訴えの利益がなくなる

 仕上がった準備書面をみて、違和感をおぼえました。

 当事者の表示が「反訴原告」と「反訴被告」だけになっています。こちらが提起した本訴はどこにいってしまったのでしょうか。

弁護士にたずねてみると、

「期日に裁判官からうながされて、口頭で取り下げをしたから」

とのことでした。なぜ取り下げをしたのでしょうかと聞いたら、

 「本訴は債務不存在確認請求訴訟でしょ。だったら反訴が出たら訴えの利益がないじゃない」

  なるほど、そういうことでしたか。

  反訴をうながす訴訟

 債務不存在確認請求訴訟は、債務者の側から債権者に対しておこす訴訟です。一番典型的なのが交通事故の加害者が被害者に対しておこすパターンでしょう。加害者が被害者に「債務はない」との確認を求める、というとひどい感じもしますが、被害者からの反訴をうながすという目的もあるのです。

 本来被害者が加害者に対して損害賠償の請求をすべきところ、なかなか請求をしてこない場合などに、加害者が債務不存在の確認を求める訴訟を提起すれば、被害者は反訴する形で損害賠償請求の訴訟を提起することになります。

 被害者から損害賠償の請求がなされれば、「債務は存在する」ことになり、債務不存在の請求は訴えの利益を失います。

 そのまま訴訟を進行すれば「請求の利益なし」ということで却下の判決が出ますが、実務上は裁判官から取り下げをうながされて、取り下げるということになっているようです。

 ということで、こちらの債務不存在確認請求訴訟は取り下げられて、目下のところ反訴のみで裁判が続いているので、当事者の表示が「反訴原告」「反訴被告」になっているのでした。

 本訴と反訴と併合して裁判が続くときは「原告(反訴被告)」「被告(反訴原告)となり、正直面倒くさいです。

 さて、準備書面を送りましょうか。

ストレートアームではなく適格なハンドリングで安全運転