交通事故の損害賠償額の計算には赤い本か青い本か緑本か黄色本が必要です
交通事故の損害賠償額の提示が保険会社からだされてきました。 チェックを求められたのでマイ赤い本を取り出します。
計算してみると、かなり赤本基準より低い提示です。これは納得できない数字です。
赤い本の正式名称は『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』ですが、赤いから「赤い本」「赤本」と呼ぶのが一般的です。
赤い本はこれまでの交通事故の損害賠償についての過去の裁判例のデータベースです。毎年2月に新しい版がでて、内容が更新されています。赤い本を損害賠償額の算定根拠とすることは、過去の裁判例を踏襲した損害賠償額ということになるのです。「赤本基準」は保険会社にも通じる言葉です。
また赤い本は交通事故だけではなく、人にケガをさせてしまったときにも損害賠償額の算定根拠として利用されています。
赤い本に書いてあること
赤い本に書いてあることは大きくわけると4つです。
①過去の裁判例
②過失相殺
③傷害慰謝料・後遺障害慰謝料
④資料編
①は例えば治療費、介護費用などトピックスごとに裁判例を集めています。
一口に交通事故といっても事故の態様も被害者・加害者も違います。たとえば被害者が子供だった場合、仕事をしていない大人だった場合、外国から来た観光客だった場合とでは慰謝料が違ってきます(計算の基礎とする収入が違うから)。
どの場合に裁判所がどう判断したか、過去の裁判例を参考にしながら請求額を計算します。
②は信号がある交差点か、自動車同士の事故か、と交通事故の様々なシチュエーションで加害者と被害者の過失の割合を類型化したものです。2019年版では247例の事故パターンが載っていますので、ここから類似の事故を見つけ出して自分の過失割合の主張の根拠にします。
③傷害慰謝料は通院・入院の日数で計算します(2019年版では187頁)。詳しくはまた改めて。後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級により金額が定まっています(2019年版では190頁)。
④の資料は自賠責の定まった金額と計算方法、後遺障害等級の症状別の基準や収入の根拠となる厚労省の賃金センサスなど損害賠償額を計算するのに必要なデータがのっています。
相手との交渉を組み立てる交渉屋は①②が大事で、損害金計算書をつくる私たち事務屋は③④が必要です。事務屋は交渉のための材料をまとめるのが仕事ですから。
赤い本は日弁連交通事故相談センター東京支部の発行です。全国版は「青い本」、大阪版は緑、名古屋は黄色なのだそうです。すべて信号カラーなのは車がらみだからなのでしょうか。
仕事しながら赤い本の傷害慰謝料の計算、休業損害額の計算、逸失利益の計算をおぼえました。せっかくおぼえたので、次回以降解説します。