改正した財産開示制度で差し押さえはかけやすくなります

 4月1日施行の改正民事執行法の中で、財産開示の制度がぐっと使いやすくなりました。

 平成15年に導入された財産開示の制度は、債務名義を持つ債権者が債務者に財産を開示するよう裁判所をとおして命じてもらう、というものでした。
 しかし、財産開示に応じないとか虚偽の開示をしたとしても罰則が軽く、実効性が薄い制度でした。私は一度もこの手続が行われているのを見たことがありません。

 今回の改正で、①罰則が加重された、②申立人の範囲が広くなった、③第三者情報提供を求めることができる、ということになりました。

  • 罰則が加重された【新213条】
     これまで30万円以下の過料が、刑事罰(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)と加重されます。
  • 申立人の範囲が広くなった【新197条】
     これまで財産開示制度を使うことのできなかった仮執行付きの債務名義や公正証書の執行調書でも、この制度を利用できるようになりました。
  • 第三者情報提供を求めることができる【新205~207条】
     債務名義と一般の先取特権者は債務者についての以下の情報を裁判所を通じて開示を求めることができます。
    ・金融機関から預貯金、上場株式、国債等に関する情報
    ・登記所に所有権の登記名義人である土地・建物に関する情報

 さらに扶養義務の定期金債権(151条の2)、人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求の債権者は、役所、年金事務所から債務者の勤務先の情報の開示をもとめることができます。

 強制執行のネックは、債務者の銀行口座がわからなくて差し押さえられない、とか勤務先がわからなくて給料を差し押さえられない、ということです。せっかく債務名義をとっても、差し押さえをかけられなければ何の意味もないのです。この新しい財産開示制度を利用すれば、そうした悩みが解消されますね。

 現在問題となっている、養育費の支払いを受けられずに困っているシングルマザーや不誠実な加害者に泣かされている事故の被害者も、債務者の勤務先を自分で調査せずに裁判所を通じて情報を得られることは、差し押さえをかけられる可能性が広がります。

 法務省も力が入っているようで、この民事執行法改正について動画を配信しました。
 『財産調査の実効性向上~令和元年民事執行法改正』というタイトルです。

www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00247.html

 この新しい制度を使ってもらいたいという熱意が感じられます。
 確かに法務省民事局参事官とお姉さんの対話形式の動画にすることでわかりやすくはなりましたが、いかんせん法律用語がいちいち難しいのが玉にキズです。  この動画が、養育費を払わずバックレている父親に困っているシングルマザーや不誠実な加害者に苦しめられている事故の被害者の目に届くといいなあと思います。