休業損害の計算は職業ごとに基礎収入のとり方がかわります

 今日は休業損害の計算をしてみましょう。

 交通事故で負ったケガの治療のために仕事を休まざるを得ず、休んで働けなかった損害が休業損害です。入通院日数と自宅で療養した日数分の損害です。

 会社勤めの人なら、会社から「休業損害証明書」の書類を出してもらえばそれで証明完了です。自営業者や主婦の人の場合は、計算して具体的な休業損害額をだします。

自営業者は白色と青色で少し違う 

○白色申告者の場合

{((事業所得+事業専従者控除額)×本人寄与率)÷365}×休業日数

自営業者の場合は前年の確定申告書で、「事業所得」の額と「事業専従者控除額」の金額を確認します。

  「事業所得」⇒申告書1ページ目左中央の所得金額欄の事業①

  「事業専従者控除」⇒申告書1ページ目右中央その他欄㊿

 事業専従者とは事業を手伝う家族のことで、税金の控除があります。事業で稼いだお金と控除で差し引いたお金を足しこんだのが前年度の事業所得です。自営業者本人がそのうちの何%を稼いだとみるか、例えば「80%は自分が働いた得たお金だ」とするなら本人寄与率を80%として計算します。

○青色申告者の場合

  ((事業所得+青色申告特別控除額)÷365)×休業日数

 自営業者の場合は前年の確定申告書で、「事業所得」の額と「青色申告特別控除額」の金額を確認します。

  「青色申告特別控除」⇒申告書1ページ目右中央その他欄 51

  白色と青色と少しだけ違いますので、注意してください。

  いろいろと難しいので、私も種本をみながら計算しています。

 種本は『損害賠償における休業損害と逸失利益算定の手引』(保険毎日新聞社刊)です。実際の確定申告書と計算事例を織り込んだ本なので、わかりやすいです。

 自営業者は現実の収入が減った場合に、はじめて休業損害が生じたと言えます。ひとりでお店を経営している人が事故に遭い、痛みを我慢して営業を続けて収入減がなかった場合は休業していないのだから「休業損害」はないことになります。

 なお、休業中の固定費(家賃、従業員の給料など)は休んだからといって支払わなくていいことになりませんので、損害として認められます。どの損害が認められるかは赤い本の「休業損害(2)事業所得者」に挙げられた裁判例を参照してみてください。

主婦の場合は賃金センサス

 「賃金センサス」とは厚生労働省がまとめた「賃金構造基本統計調査」の通称です。赤い本の巻末の緑のページに掲載されていて、性別・年齢・学歴ごとにモデル年収が出されています。

 例えば50歳の女性のモデル年収をみてみましょう。

 平成29年①「女子全学歴計」         3,778,200円

      ②「女子学歴計50~54歳」    4,170,200円

 ①は全年齢を対象にした年収、②は50~54歳に限定した年収です。②の方が高額に算定されています。①と②は学歴は考慮していませんので、さらに学歴ごとに並べてみます。

      ③「女子中学卒50~54歳」    3,190,600円

      ④「女子高校卒50~54歳」    3,438,600円

      ⑤「女子高専・短大卒50~54歳」 4,515,000円

      ⑥「女子大学・大学院卒50~54歳」6,053,900円

 ①~⑥で一番高額なのは⑥です。このように年齢・学歴によって金額がちがいますから、一番有利な金額を算定根拠にします。

 自営業者と同じく、(算定根拠の年収÷365)×休業日数です。主婦の方でパート収入もある方の場合は、賃金センサスとパート収入の高額な方を選びます。

自賠責は5,700円/日

 自賠責では1日につき5,700円(収入減があった、あるいは有給休暇を使った日数)で、立証資料により日収が5,700円以上と認められればその額を基準とします。

 このように休業損害の計算では、事故前年度の基礎収入を固めることが第一です。会社が休業損害証明書を出してくれる場合はいいのですが、その他の場合はケースごとに対応が違ってきます。赤い本の「休業損害」の裁判例を参考にして、基礎収入の確かな立証が必要です。