相続手続・遺産分割 目次

相続財産

相続手続

遺産分割
  (1)遺産分割協議
  (2)寄与分
  (3)特別受益
  (4)未成年の相続人
  (5)遺産分割協議でおさえた方が良いこと

相続手続・遺産分割

私たちの生活には様々な法律ルールがありますが、親子・夫婦についての法律は特に身近なものと言えましょう。その中でも、最近は特に遺言書の作成に関心が高いようです。遺言書を作成することは、遺された家族のために自分の意思を書きのこすことで後顧の憂いをなくすことができるし、なにより遺された遺族に対して一番必要な時にメッセージをおくることができるのです。

相続財産

「相続」とは、被相続人の財産上の全ての権利義務が、被相続人が死亡した時から相続をするべき人(法定相続人又は受遺者)に移転し、相続をするべき人が自分のものとして背負うことです。

「被相続人の財産上の全ての権利義務」
⇒プラスの財産とマイナスの財産の全て
プラスの財産 :預貯金、土地建物、車や骨董品、株式
           債権(貸したお金やゴルフ会員権の預託金など)

マイナスの財産:債務(借金)

相続手続

法律の考え方では、被相続人(死亡した人)が死亡した時から、被相続人の相続財産はその被相続人の法定相続人に、法定相続分の割合で共有する財産になると考えます。具体的に分ける手続をする前から、法律の理屈の中では、相続人が4人なら、4人で共有する財産、になったということになるのです(相続割合については「法定相続人」のページをご覧下さい)。

もし、遺言書があるのなら、その遺言書の指示するとおりの割合で、受贈者(遺言で財産を受取る人)が相続財産の持ち主になったことになります。
 
遺言書がない場合は、相続財産は相続人全員の共有物ということになりますから、相続人全員が話し合って法定相続分どおりでない割合で相続財産を相続することもできます。この話し合いを「遺産分割協議」と言います。遺産分割協議については後ほど。
 

相続財産を実際に受け取るには、その受取手続、預貯金の解約や不動産の所有名義の変更、といった手続が必要です。この手続は、相続人が全員参加でしないといけません。もし、相続人の1人が、被相続人が口座を持っている銀行に行って、「自分には相続分があるから、その相続分だけ被相続人の預金を受取りたい」と申し出ても、絶対に銀行は応じてくれません。
 
あらゆる相続手続で、必ず求められるのは、
 
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式(相続人が誰なのかを確認するため必要)
相続人全員の印鑑証明書
相続人全員の戸籍謄本や住民票を求められることもあります。
 
被相続人の一生分の戸籍一式は、相続人が、誰で、何人いるのかを証明するために必須です。また、遺言書や相続人全員で作成した遺産分割協議書があれば、法定相続分以外の相続割合で相続手続をするという証拠となるので、提出を求められます。
相続放棄をした人があれば、その人の相続放棄受理証明書を提出し、相続人でないことを明らかにします。

遺産分割

先ほどもふれましたが、被相続人が遺言書を遺していない場合は、相続人全員が話し合って法定相続分とは違う割合で相続財産を分けることができます。
 
(1)遺産分割協議

相続人全員で話し合うことを、「遺産分割協議」と言い、その結果をまとめた書面が「遺産分割協議書」です。必ず、全員実印を押します。この遺産分割協議書で定めたとおりの方法で、相続財産の処分の手続をすすめます。
 
この遺産分割協議は自分たちで集まってするものですが、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てるという方法もあります。
 
相続人全員の足並みがそろわない時や、第三者の立場の家庭裁判所の調停員を間に挟んで話し合いたいというときには便利です。自分以外の他の相続人のうちの1人の住所地にある家庭裁判所に申立てをします。
 
これまでみてきたように、相続手続は全員参加なので、大変です。相続人全員が近所に住んでいればそうでもありませんが、例えば金融機関に提出する相続財産を受取る申請書類などは、相続人全員が実印を押すことを求められますので、遠いところに住んでいる相続人がいたりするとなかなか手続が進みません。
 
この場合、中心となって手続をしてくれる人を1人決めておいて、
 
その相続人1人が全部の相続財産を受取る
相続財産の全部を受取った相続人が他の相続人の代償金
  (全部の財産をもらったことの引換えに払うお金)を払う
 
という内容の遺産分割協議書を作成するという方法があります。
この遺産分割協議書で、相続人の1人が全ての相続財産を受けるることにして、その人に相続財産の処分手続をしてもらい、他の相続人は代償金として自分の相続分の相続財産を受取る、というやり方です。もちろん、すべての手続をしてくれる相続人には、その労力の分として受取額を少し多めにすることも必要です。

(2)寄与分

相続では、親が死亡して相続人は子供だけ、というパターンが一番多いのではないかと思います。そうすると、相続人として同じ順位の子供たちの相続分は平等です。しかし、子供の中でも、例えば「長男」だからと親の面倒をずっとみつづけたのに、いざ相続となったら「法律上、子供の相続分は全員平等だ」と他の兄弟に言われてしまったけど納得できない、というように家族・法定相続人の間で、さまざまな事情もあることでしょう。
 
この被相続人に対して、自分を犠牲にして尽くしてきた相続人は、他の相続人に対して、その尽くしてきたことに報いてもらうための多めの相続分を求めることができます。この権利を「寄与分」と言います。
 
ただ、家庭裁判所の遺産分割調停では「寄与分」が認められることは、とても難しいようです。「自分はやりたいこともあったけどあきらめて、親の家業を継いでここまでやってきた。他の兄弟たちより親に貢献したのだから寄与分を認めてほしい」と主張したとしても、そのことで自分自身はまったく財産をもてなかったという位に全身全霊で親の家業を支えていないと認められないほど難しく、遺産分割調停において、もめるポイントになりがちです。

(3)特別受益

子供の1人が結婚するときに家を建ててもらった、という場合は、その子供は相続財産を先にもらったものだと考え、その家を建てる費用も相続財産に組み入れます。これを「特別受益の持戻し」といいます。その家を建ててもらった子供は、先に相続財産を受取っているということになるので、その分、実際に相続手続となったときには、よほど相続財産本体が大きくない限り、相続する財産はでてこない、ということになります。

(4)未成年の相続人

未成年者は法律行為ができません。必ず親権者が代理することになっています。遺産分割協議も法律行為の一種です。そうすると、未成年の相続人は遺産分割協議に参加できないことになります。
 
しかし、例えば、お父さんが死亡して相続人はお父さんの配偶者であるお母さんと未成年の子供の1人、合計相続人は2人、という場合で考えてみると、遺産分割協議はお母さんと子供、子供は親権者が代理することになりますので、子供の親権者であるお母さんが子供の代理人として協議に参加することになります。すると、実質的にはお母さん1人で協議することになってしまい、お母さんが自分に有利な遺産分割をすることができてしまいます。この状態を「利益相反」といいます。
 
そのようなときは、子供のために家庭裁判所に「特別代理人選任の申立」をします。子供にお母さんではない別の中立な立場の特別代理人をつけて、お母さんと子供の特別代理人が対等な立場で遺産分割の話し合いをします。「利益相反」の状態での遺産分割協議は無効です。

(5)遺産分割協議でおさえた方が良いこと

相続人が全員参加であること
相続人全員が署名捺印(実印で)しないと、全く役に立たちません。1人でも反対した人がいたら成立しません。「自分は相続財産は欲しくない」という相続人がいるなら、家庭裁判所に「相続放棄」(「法定相続人」をご覧ください)の申述(申立)をして相続人でなくなるか、あるいは遺産分割協議書の内容で取り分はなし、と定めるか、どちらかのカタチが必要です。
 
相続人の中で消息不明の人がいる場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申立」をし、家庭裁判所に選んでもらった不在者財産管理人を消息不明の相続人の代理人として話し合いをします。
ただ、「消息不明」と親族が思っている人でも、戸籍や戸籍の附票をたどってみると消息がつかめることもあります。
どうしても話し合いに参加しない相続人がいるなら、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てるしかないでしょう。
 
対象となる相続財産の全部を把握し、相続人全員で納得する
せっかく遺産分割協議をまとめたのに、その後遺品を整理したら、これまで見たことがなかった通帳が出てきちゃった、ということもありますし、「もっと被相続人は財産を持っていた筈だ、隠している」と言い出す人がでてくることもあります。じっくりと調査し、相続人全員で確認しましょう。
 
このような事態に備えて、遺産分割協議書の中で「この遺産分割協議書により分割されていない相続財産が発見された場合は、相続人の○○がその相続財産を相続する」というような保険的な文言を加えておくこともありです。
 
親しき仲にも礼儀あり
どうしても身内は気安い間柄なので、その気安さが裏目に出て、ときに言ってはいけないことをつい口にしてしまうことがあります。
 
また付き合いが長い分、いろいろな感情の蓄積もあります。「兄さんはいつも自分が正しいと思って一人でなんでも決めてしまう!あのときだって…」というふうに、うっかりこれまでの鬱屈を爆発させてしまわぬよう、冷静であるよう意識しておいた方が良いと思います。
 
遺産分割がこじれて、兄弟同士がケンカになってしまい、さらに巻き込まれて兄弟の子供達、つまりいとこ達までケンカになってしまった、という事例もあります。
 
そのような事例をみるにつけ、「これからの法事の時はどうするのだろうか」と私は他人事ながら心配になります。
更に、こじれる火種が相続人間にない時でも、相続人のパートナーがくちばしをつっこんでかき回してしまう、というもめ方をすることもあります。もちろん複雑な遺産分割の話し合いで悩んでいるパートナーをサポートするのは良いことですが、後ろからパートナーを煽って話し合いをややこしくさせるのはいけません。相続関係者以外には単なる「預金」や「不動産」としか映らないものでも、相続人にとっては「お母さんがコツコツ貯めた預金」だし「お父さんが汗水たらして働いて建てた家」です。大切なものなのです。

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